GARY BARTZ/MUSIC IS MY SANCTUARY

Music Is My Sanctuary

Music Is My Sanctuary

77年作『Music Is My Sanctuary』も前作の延長線上にありますが、有名ソウル曲のカバーを2曲含むなど、よりソウル寄りのアルバムとなっています。
何と言っても、タイトル曲の「Music Is My Sanctuary」の素晴らしさでしょう。シリータの透明感のある可憐なヴォーカルが映えるジャジー・ソウルの名曲です。LTDの有名曲のカバー「Love Ballad」も、まるで愛を交歓するかのようなシリータの歌とバーツのサックスが素敵な曲です。
すべての楽器の音が原色に煌めくジャジー・グルーヴ「Carnival De L'Esprit」、タイトなビートの都会派ジャズ・ファンク「Swing Thing」、まったりメロウなジャジー・ソウル「Macaroni」も良いです。
個人的には前作の方が好きですが、こちらもやはりジャズ・ファンク、レア・グルーヴ好きには外せないアルバムです。

GARY BARTZ/THE SHADOW DO


ゲイリー・バーツと言えば、スピリチュアル・ジャズのサックス奏者としての評価が高いのだと思いますが、残念ながら70年代前半までの硬派な作風には僕は馴染めませんでした。で、僕にとってのバーツはミゼル兄弟と組んだ『The Shadow Do』と『Music Is My Sanctuary』の2枚ということになります。
75年作『The Shadow Do』の最大のトピックはやはり、ア・トライブ・コールド・クエスト「Butter」ネタとして有名な「Gentle Smiles(Saxy)」でしょう。酩酊感漂うムードに、螺旋階段を上っていくようなサビの歌メロとサックスのフレーズが印象的なジャジー・メロウ・グルーヴの傑作です。
アルバムの他の曲も、スカイ・ハイ・プロダクションらしい爽快な音で満たされています。シンセとクラヴィが柔和なグルーヴを紡ぐジャズ・ファンクWinding Road」。滑らかなバーツのサックスが本人の歌唱以上によく歌う「Mother Nature」。麗しいピアノに出だしから掴まれ、いつものミゼル印の男声コーラスが虚空を舞うメロウ・グルーヴ「Love Tones」。潮騒のようなシンセの音が敷き詰められ、海鳥を思わせるホイッスルが遠くに聞こえる中、サックスとリズム・セクションが爽快に飛ばすジャジー・ブリージン「Sea Gypsy」。サックスとトランペットの違いでしょうか、同年のドナルド・バード『Places And Spaces』ほど突き抜けた爽快感はありませんが、より腰の深いグルーヴを堪能できるジャズファンク・アルバムです。

LOWRELL

ロウレル

ロウレル

マッシヴ・アタック「Lately」、コモン「Reminding Me」をはじめ、サンプリングの定番ネタとして、またメロウ・グルーヴの大クラシックとして知られる「Mellow Mellow Right On」。この曲を収録した元ロスト・ジェネレーションロウレル・サイモンの79年のソロ作なんですが、数年前にオリジナルを入手して以来、何か不気味な雰囲気のアルバムだなぁって思ってたんです。お世辞にも傑作といえるようなモノではないし、確かにシカゴ・ソウル的な滋養を音の端々に感じることはできるのですが、手抜き気味のジャケットも含めて、何か得体の知れないアングラ感が充満しています(ロスト・ジェネレーションの作品は未聴なのですが、このアルバムと共通する雰囲気があるのでしょうか?)。先ごろCD化されたのも、アルバムに対する評価というより、「Mellow Mellow Right On」人気に押されたカタチでしょうし。
しかし、妙に魅かれるものがあるんですよね、コレ。強力なベースラインに腰が揺れる「Mellow Mellow Right On」はやはり別格の出来ですが、その他も佳曲揃いです。流麗なストリングスを纏い、クラヴィネットをザックリと刻み付けるミッド・グルーヴ「You're Playing Dirty」。太いパーカッションがバウンスする中、爽やかさと妖しさが入り混じったストリングスとアコギの音がカタルシスをもたらす「Overdose」。洗練と野趣が同居する解放感溢れるメロウ・スロウ「Smooth And Wild」。これらの薄暗くジメジメした地下室で生み出されたようなサウンドは、個人的には、(ちょっと飛躍しすぎですが)どこか80年代初期のプリンス(『Dirty Mind』とか『Contorovesy』)と、音楽のタイプは違えど相通ずる雰囲気を感じます。

THE FATBACK BAND/KEEP ON STEPPIN'

Keep On Steppin

Keep On Steppin

「ニューヨークで1番のファンク・バンドは?」ともし訊かれたら、BTエクスプレスやブラス・コンストラクション、シックを抑えて、「ファットバックで決まりでしょ!」と間違いなく答える僕です。ま、誰かにそんな質問されることはまず有り得ませんが(笑)
ファットバックのアルバムは、80年代の『Hot Box』や『Tasty Jam』、傑作モダン・ダンサー「I Found Lovin'」収録の『With Love』も悪くはないのですが、どれがベストかとなればやはり70年代中期の傑作、埃っぽい重量級グルーヴを撒き散らすストリート・ファンク『Keep On Steppin』、メタリックで油まみれ、ジャケも最高な最強ディスコ・ファンク『Yum Yum』の2枚になるかと思います。『Yum Yum』の方は先にomoさんがレヴューされていたので、僕は『Keep On Steppin'』の方を取り上げたいと思います。
ドラムスとベースが激重グルーヴを叩き出すブギー・ファンク「Mr. Bass Man」。野卑なギターのカッティングとゴリゴリのビートがジワジワとグルーヴを焚きつける「Stuff」。重く沈むリズムの上を、フリーキーででファンキーなギター・カッティングとホーンズを垂れ流すルーズ・ファンク「New York Style」。強靭なリズムのカッコいいパーティー・ファンク「Wicky Wacky」。重たいベースラインに思わず腰が動くゴリゴリのファンク「Feeling」。タイトル通り永遠にステップ&グルーヴしつづけるミッド・ファンク「Keep On Steppin'」と、どれもこれも超弩級ファンク・グルーヴで攻め立ててきて、息つく暇もありません。
鬼ファンクの影に隠れがちですが、メロウ系の曲も単なる箸休め程度では決して終わらない良曲揃いです。ハモンドの暖かい響き、涼やかなフルートにのって愛を歌う傑作メロウ・グルーヴ「Love」、ゆったりとしたリズムのいなたいミディアム「Can't Fight The Flame」、スィートなメロディで聴かせる素敵なメロウ・ソウル「Breaking Up Is Hard To Do」など、すっかり気持ちよくなってしまいます。
ジャケットの印象どおり、路地裏の饐えた臭いを感じさせる強力なファンク・アルバムです。
このアルバム以前、パーセプション時代のアルバムは未聴ですが、Pヴァインの素晴らしいコンピ『Killer Jazz Funk From Perception/Today Vault」に、この時代の曲が4曲収録されています。
リターン・オブ・ジャズ・ファンク~キラー・ジャズ・ファンク・フロム・パーセプション/トゥデイ・ボルト

リターン・オブ・ジャズ・ファンク~キラー・ジャズ・ファンク・フロム・パーセプション/トゥデイ・ボルト

イベント時代よりも少しユルめのグルーヴですが、こちらもなかなかです。

THE 3 PIECES/VIBES OF TRUTH

ヴァイブス・オブ・トゥルース

ヴァイブス・オブ・トゥルース

75年、ファンタジー発のジャズ・ファンク〜ソウル盤。70年代前半は自分のアルバムの制作をミゼルさん家に任せっきりだったドナルド・バード師匠のプロデュース、ウェイド・マーカスによるアレンジです。このアルバム全体をヒタヒタと覆うユル〜いグルーヴ、鈍く光るストリングス、ホーンズとパーカッションのいなたく粋な絡み、これぞ70's vibesって感じです。
ほっこり暖かいコーラスにストリングスが映えるミディアム・ソウル「I Need You Girl」、スリリングな雰囲気のジャジー・グルーヴ「Back Up Against The Wall」、フルートの音色にまどろむメロウ・ソウル「Vibes Of Truth」、パーカッションやら何やらがチャカポコとリズムを刻むジャズ・ファンク・インスト「Shortin' Bread」、生温いグルーヴでゆる〜くキメるジャジー・ソウル「Self Dealin'」、路地裏感漂う弛めのジャズ・ファンク「Concrete Jungle」、情感豊かな弦アレンジと甘く蕩けるような楽器の絡みが素晴らしい極上メロウ・ソウル「If Only I Could Prove To You」、文字通りクールなインスト「Cool It」など、脱力を誘うユルユルっぷりが気持ち良過ぎです。

70's vibes 〜はてなリング
id:egg_333さん主宰のリング[70's vibes]、渋カッコいいロゴも素敵です。 "70年代のジャズ、ソウル、ファンク、レアグルーヴ…"ということで、僕の好みの音楽ど真ん中で嬉しい限りです。eggさん、ご苦労さま&ありがとうございました♪

せっかくなので、いかにも70's vibesな盤でも聴こうと思い、何かないかな〜とレコ棚を漁っていたら、ナルホドいかにもな、こんなお皿が出てきました。

AMP FIDDLER/WALTZ OF A GHETTO FLY

Waltz of a Ghetto Fly

Waltz of a Ghetto Fly

高校生の頃、僕はPファンクにハマり、パーラメントのCDを買い漁ってました。その頃、Pファンク人脈の新世代として登場したのがMr.フィドラーという兄弟ユニットでした。彼らのアルバム『With Respect』は、個人的にはジョージ御大の『Cinderella Theory』以上にお気に入りでした。
そのMr.フィドラーの片割れ、アンプ・フィドラーが04年にリリースした『Waltz Of A Ghetto Fly』。アンプは近年、(大雑把な言い方ですが)クラブ・ミュージックの分野での活躍で知られていたようですが、マクスウェル『Urban Hung Suite』やオルー『Soul Catcher』への参加などもあり、そうした活動からジャンルの垣根を越えた幅広い音楽性を構築していったようです。このソロ作は、ソウル、ファンク、テクノ、ハウスといった、これまでのキャリアで培った様々な要素を溶かし込みながら、音楽的な洗練を獲得することに成功しています。
アルバムを一聴して分かるのは、意外にもスライ・ストーンの多大な影響です。『With Respect』にもスライ調のクール・ファンク「Cool About It」みたいな曲がありましたが、このアルバムではスライからの影響を、更にアンプ流に咀嚼〜構築したファンクネスを聴くことができます。スライ「If You Want Me To Stay」のアップ・デイト仕様みたいな、グニャグニャと蠢くグルーヴのスロー・ファンク「I Believe In You」、ジェイ・ディーmeetsスライな感じの「Dreamim'」、オルガンがリズミックに動くクール・グルーヴ「Soul Divine」、「You Caught Me Smilin'」をサンプリングした、沈み込むグルーヴが気持ちイイ「You Play Me」、深海を漂うような酩酊グルーヴの「Eye To Eye」、いかにもスライがやりそうな、ヤケっぱちの哀愁メロの「If You Can't Get Me Off You Mind」 など、『Fresh』に近い雰囲気のクール・ファンクがアルバムの印象を支配しています。アンプの鼻にかかったくすんだヴォーカルも、かなりスライっぽいです。
他にも、美しい鍵盤の旋律が流れるメロウ・ソウル「Possibilities」、艶っぽい女声ヴォーカルが効果的なジャジーなメロウ・グルーヴ「Unconditional Eyes」、マシーン・ビートの無機質な刻みに色気が宿る「This Is How」といった、メロウ系の曲もなかなか充実しています。
妖しいグルーヴと黒光りするファンクネスの体現という意味において、2000年以降にリリースされた作品としては唯一、ディアンジェロ『Voodoo』に対抗し得るアルバムではないか、と個人的には思っています。