WAR/YOUNGBLOOD

Youngblood

Youngblood

ファンクを軸にジャズやラテンとの大胆なミクスチュアを試み、高度な演奏力で豊潤な音楽性にまで消化/昇華せしめた名ファンク・バンド、ウォー。彼らの作品ならまず、ガソリンの臭いたちこめるストリートの喧騒を活写した、グラミー受賞のヒット作『The World Is A Ghetto』、陽気さとセンティメントが溢れるカリブ/ラテン・フレイヴァーのサウンドで団結を呼びかける『Why Can't We Be Friends?』をはじめとする70年代前半の傑作群を取り上げるべきでしょうが、70年代後半の彼らも捨てたもんじゃない、ということで78年作のこのアルバムです。
サントラらしい緊迫感煽る「チェイス系」の曲もありますが、ウォーらしい明るくファンキーなグルーヴが楽しめる作品です。タイトにグルーヴする十八番の長尺ラテン・ファンク「Youngblood(Livin' In The Streets)」、明るく弾むようなポップ感が眩しい、ブランド・ヌビアン「Feel So Good」ネタの「Sing A Happy Song」、呪術的なサックスのフレーズと肉声に幻惑されるラテン・ジャズ・ファンク「Keep On Doin'」、ダウン・トゥ・アースなルーズ・ファンク「This Funky Music Makes You Feel Good」、疾走するビートの上をフルートやピアノが舞うインスト・ラテン・グルーヴ「Flying Machine (The Chase)」など、クォリティの高い曲が並んでいます。
全盛期と比較するとやや小粒感は否めませんが、決して侮れない佳作です。

MASSIVE ATTACK/BLUE LINES

Blue Lines

Blue Lines

ブリストル」と言えばジョニー・ブリストル、トリップ・ホップって何じゃらほい?、という僕にとってもこのマッシヴ・アタックの1stは忘れ難き作品です。コレを[UK SOUL]に(便宜上)カテゴライズすることに、今となっては違和感を感じる方も多いかと思いますが、91年のリリース当時はSOULⅡSOULやヤング・ディサイプルズと同列に捉えられていたように記憶しています(当時高校生だった僕が勝手にそういう風に捉えていただけかも?)。
このアルバムは、70'sソウル/ファンクのサンプルを軸に、幾何学的で重層的なグルーヴと、ビターな感傷と冷めた視点を感じさせる空気でもって、アメリカ産ブラック・ミュージックには有り得ないビート音楽を生み出しています。
ゴリゴリの重低音ベースラインが荒々しいグルーヴを押しつける1曲目「Safe From Harm」から、シンプルな鍵盤音のループにアイザック・ヘイズ「Ike's Mood」の重厚なシンフォニーのサンプルが被さる「One Love」、クールな佇まいのラップに痺れるスモーキン・グルーヴ「Blue Lines」、ウィリアム・ディヴォーンの原曲をUKストリート・ソウルのシンボリックな曲にまで押し上げた「Be Thankful For What You've Got」のカバー、アル・グリーン「I'm Glad You're Mine」のドラム・ブレイクが重苦しく垂れ込める「Five Man Army」、チャールズ・ステップニーみたいな荘厳なストリングスと性急なビートが切迫感を煽る「Unfinished Sympathy」、リズミックなビートにニヒルなラップが乗る「Daydreaming」、ロウレル「Mellow,Mellow Right On」ネタ一発で持ってかれる「Lately」、牧歌的なメロディと歌に胸が熱くなるラストの「Hymn Of The Big Wheel」…と、全曲イイですわ。
ボーカル陣もそれぞれの持ち味を生かしきったイイ仕事をしていて、退廃的なパッションを放つシャラ・ネルソン、トリッキーらの抑揚を排したクールで知性的なラップも良いのですが、何と言ってもホレイス・アンディのスィートで切ないレゲエ声が素晴らしいです。特に「Be Thankful For What You've Got」が現在まで持ち続ける神通力は、彼の名唱なくしてはありえません。
個人的にはこの後の彼らには興味がない(聴いていない)のですが、この『Blue Lines』は僕みたいなソウル・ファンでも、15年経った今も飽きずに聴き続けられる名作だと思います。

RICARDO MARRERO & THE GROUP/TIME


ラテン音楽って、僕はそれほど聴いてるわけではありません。ダニー・ハサウェイマーヴィン・ゲイの音楽には、ジャズの要素と同じくらいラテンのテイストが盛り込まれていますし、そういうラテン的効用を生かしたソウル・ミュージックが好きなんですが、純度の高いラテン音楽に触れることはほとんどありません。
このリカルド・マレロの77年作『Time』は、そんな僕にも気持ちよく聴けるラテン・ソウルの好作です。ジャズ/フュージョン的な雰囲気もあり、とても風通しのよい爽やかな音を奏でています。
陽気なラテン・ソウル「Sin Ti」から軽快に始まる本作、仄かに哀愁漂わせるリズミカルな「Con El Sentido De Ayer」、穏やかでウォーミーな「Vida Vida」、爽快な空気の中でリリカルなピアノがパッションを彩るラテン・フュージョン「Land Of The Third Eye」「Southern Boulevard」、海風に吹かれながら砂浜でダンスしたくなるようなブリージー・グルーヴ「A Taste Of Latin」、などメロウなラテン・ソウルをたっぷり堪能できますが、白眉はラストの「Feel Like Making Love」。言わずと知れた有名曲のカバーですが、フルートやパーカッションがメロウに層を重ね、後半はダンサブルに展開し盛り上がる素晴らしいアレンジを施したのは、なんとあのアンジェラ・ボフィル。数多くのカバーを生んだ曲ですが、個人的にはマリーナ・ショウのヴァージョンに勝るとも劣らない出来だと思います。
聴いててすっかり気持ちよくなってしまいました。この手のラテンものをこれからもっと聴いていきたいです♪

COMMODORES/MACHINE GUN

Machine Gun

Machine Gun

学生時代、PファンクやらJBやらにどっぷり浸かっていた僕は、コモドアーズのことを完全にナメてました。いや、ナメてたと言うより、ハナから眼中になかった。一連のバラード・ヒットや、ライオネル・リッチーのクロスオーバーっぷりとその大成功ぶりから、軟弱なフニャチン野郎どもとすっかり決め付けてました。
そんな若かりし時代のある日、シルバーのジャケットがカッコいいこのアルバムをレコ屋で見つけ、投げ売り状態のプライスを見て試しに買ってみました。家に帰って針を落とした瞬間、あまりのカッコよさに絶句。いや〜、コモドアーズって凄いファンク・バンドだったんですね。少なくとも、これはモータウンで一番のファンク・アルバムでしょう(多分)。あれから10年、未だにコモドアーズのアルバムはこの1stしか持ってませんが(笑)
まずタイトル曲の「Machine Gun」。タイトなビートを刻むドラムスと耳にこびりつくクラヴィがカッコいいインスト・ファンク。「Rapid Fire」は「Machine Gun」の続編的な速射砲ファンク。タイトルに共感する(?)「Young Girls Are My Weakness」は粘っこいグルーヴのミッド・ファンク。思わず腰が揺れるグルーヴたっぷりのバンプ・ファンク「I Feel Sanctified」、タイトルそのまんまの「Bump」、出だしがブラックバーズ「Rock Creek Park」みたいな、パーカッションが効果的な「Gonna Blow Your Mind」など、ファンクはどの曲もカッコいいです。
また、凝った展開のジャングル・ブラザーズ「Black Woman」ネタ「Assembly Line」など、ファンクのみに留まらないセンスを感じさせる曲も収録されています。
後のトレードマークとなるバラード系の曲は入っておらず、ほぼファンクのみで貫き通したデビュー作。若さと勢いが漲っていて、彼らの原点がどこにあるかを教えてくれているようです。

BOBBY THURSTON/SWEETEST PIECE OF PIE

SWEETEST PIECE OF TH

SWEETEST PIECE OF TH

いや〜、スゴいガタイ。ボビー・サーストンのことです。エクスパンションの再発CDのジャケット裏の写真、一体何食ったらこんな巨漢になるんでしょうか? パイの一片だけなんてとても信じられません(笑)
そんな見た目のオモシロサ(失礼)に反して、この78年作はモデュレイションズのウィリー・レスター&ロドニー・ブラウンがプロデュース、アル・ジョンソンがキーボードを担当した、フィリー・ソウルの旨味がたっぷり染み込んだモダン・ソウルが楽しめます。
リズム隊がグルーヴを牽引するモダン・フィリー・ダンサーの傑作「Just Ask Me」から一気に引き込まれます。流麗なストリングスを纏った気持ちいいミディアム「Treat Me The Same Way」、ボビーがファルセットを交え、ジェントルに、そして熱く歌いかけるバラッドのタイトル曲「Sweetest Piece Of Pie」、懇願するかのようにタイトルを呟き、抑えきれぬ衝動を煽るようなコンガとストリングスが淫靡なムードを醸すミッド・グルーヴ「I Want Your Body」、ガッチリしたボトムのセクシー・ヴォイス入りミディアム「Na Na Na Na Baby」、軽快なテンポのフィリー・ダンサー「Foolish Man」など、一切駄曲無しの名盤です。

V.A/WELCOME TO THE NEWSROOM

ウェルカム・トゥ・ザ・ニュースルーム

ウェルカム・トゥ・ザ・ニュースルーム

このコンピ、ベイエリア・ファンクの発掘音源集なのですが、ただレアなだけのディープ・ファンク系コンピとは違い、カッコいいグルーヴのファンクからメロウな曲までが、バランス良く且つコンパクトに(コレ重要)纏められた好編集盤です。
ポール・ティルマン・スミス、エレクトリック・チャーチ、プライトの3組の曲が収録されていますが、荒々しく埃っぽいグルーヴやタワー・オブ・パワー風の分厚いブラス・セクション、ラテンともクロスする音楽性はまさにベイ・エリア産といった感じです。
最多収録となるポール・ティルマン・スミスの曲では、何と言っても「Newsroom」です。気持ちよく転がるパーカッションが軽快なリズムを刻み、柔らかなギターとエレピが濡れた音を紡ぐ極上メロウ・グルーヴ。雨の日に無性に聴きたくなる曲です。ファットバック・バンドの「Love」によく似た「A Good Dream」も、エレピの音が気持ち良過ぎるヌレヌレのメロウ・ソウル。いい夢見るどころか、桃源郷の向こう側に行ったきり帰ってこれなくなりそうです。
バウンスするようなリズムが心地よい「Back Here Again」、タイトなリズム隊がキレのいいビートを打つストリート・ファンク「Ready To Live」といったファンク系の曲、ブルージーな「Before You Know」や、やるせなさが垂れ込めるミディアム・ラテン・ソウル「This Morning,Your Sorrow」も良いです。
エレクトリック・チャーチは、JB直系の突進するグルーヴが凶暴この上ない「We Had Love」をはじめ、「We've Got To Find A Way」「I Can't Dance」といったへヴィーなディープ・ファンクで強烈な存在感を放っています。プライトは「Soul Duck」1曲のみですが、こちらもJBタイプのファンクでまずまずです。
音の悪い曲が数曲あるのが残念ですが(特にプライト)、ファンク〜レア・グルーヴ・ファンには是非オススメしたいアルバムです。

MIKE JAMES KIRKLAND/HANG ON IN THERE

Hang on in There

Hang on in There

マイク・ジェイムス・カークランドの『Hang On In There』は、マーヴィン・ゲイ『What's Going On』の影響を大きく受けた、ニュー・ソウルの裏名盤的な作品と言えます。アルバムの構成も、曲間を無理矢理詰めて繋げたり(1〜2曲目だけですが)、『What's Going On』を模したような感じです。特に、A面はサウンド、メッセージ共にニュー・ソウル色濃厚です。
冒頭の「What Have We Done」はパーカッションとタンバリンのリズミックな刻みの上に、フルートが怪しいフレーズを繰り出すビターなグルーヴィー・ソウル。カーティス「Back To The World」を彷彿とさせる大らかな曲調の、カタルシス溢れる「Where's the Soul of Man?」、へヴィーなベース・ラインとファンキーなギター・カッティングを軸に、ストリングスがジワジワと緊迫感を煽り、終盤の焼け付くようなワウ・ギターのウネリに痺れるダークなグルーヴの「Hang on in There」(先日ご紹介したコンピ『California Soul』にも収録されています)。このA面3曲は文句なしの素晴らしさです。
一方B面はニュー・ソウル的なアプローチと往年のノーザン・テイストを折衷したような曲が収められています。グルーヴィーな「Baby I Need Your Loving」「Give It To Me」は、ノーザン調のミディアム・ナンバーでなかなか美味です。「Blota Blota」は甘〜いメロディとムーディーなアレンジに酔いしれるスロウ。哀愁を湛えた疾走するグルーヴがジョニー・ブリストルっぽい「You're Gonna Share Your Loved」もかなり良い曲です。
なお、Luv'N Haightからの再発盤CDにはボートラが3曲追加されているようです。再発盤は持っていないのですが、これは是非聴いてみたいです。