GIL SCOTT-HERON & BRIAN JACKSON/WINTER IN AMERICA

Winter in America (Reis)

Winter in America (Reis)

実はこのアルバム、以前はあまり好きではありませんでした。何かすごく地味で、『Pieces Of A Man』や『It's Your World』といったジャズ・ファンクの名盤と比較すると、どうしても物足りなさを感じてしまってました。当ブログで以前彼らの作品をいくつか取り上げたときも、このアルバムにはほとんど言及していません。(http://d.hatena.ne.jp/stonegroove/20050829
しかしこの1ヶ月というもの、僕の精神状態の低位不安定さの為か、JBなどの真っ黒なファンクを聴く心境にはなれず、代わりに生真面目なジャズ作品であるこのアルバムがヘヴィー・ローテンションでした。真夜中にそっと耳に入ってくるメロウに潤んだエレピの音が、疲れたココロとカラダにスーっと沁みこんでくるんです。
74年にストラタ・イーストから発表されたこのアルバム、いわゆるファンクな要素は全く感じられません。クラブ方面からも人気の「The Bottle」にしても、淡々と刻まれるリズムはいたってクールで、ファンクとはかなり距離があります。アルバム全体を通して、深く沈静したムードが支配していて、その暗闇のなかで柔らかい鍵盤やフルートがそっと光沢を放っています。アリスタ移籍後の次作から顕著になってくるラテン・フィーリングも、ここではまだ見受けられません。
どの曲も似通った印象のため、それぞれの曲にコメントをつけるのも難しいのですが、「Peace Go With You,Brother」、「Back Home」、「Song For Bobby Smith」、「Your Daddy Loves You」あたりが特に好きです。
TVTからの再発CDには、更に4曲のボートラがついています。うち3曲がライブ音源で81-82年頃の録音なのですが、いずれもアルバム本編と共通するしっとりとした雰囲気で、これがかなり良い出来です。アルバムと同名タイトルでありながら、何故か本作オリジナルには収録されず次作『First Minutes Of A New Day』で初出となった「Winter In America」は、スタジオ録音よりも遥かに良い感じです。”ワンワンコ”でおなじみ「The Bottle/Guan Guanco」は、『It's Your World』収録の音源とはかなり異なる雰囲気で、リズムはずっと奥に引っ込めて、ベースとコンガだけが前に迫り出した演奏ですが、これはこれでまたカッコいいと思います。