CAMEO/SHE'S STRANGE

She's Strange

She's Strange

82年の傑作『Alligator Woman』から、それまでの大所帯ファンク・バンドから一気に人員整理を断行し、少数精鋭テクノ・ファンクへと移行したキャミオですが、この84年作『She's Strange』時点の正式メンバーはわずか4名となっています。大勢でワサワサとやってた『Cameosis』や『Feel Me』あたりが好きな僕としては、この人数の少なさはチョット寂しい気もします。。。もちろん、サエキけんぞう似のあのメガネの人は既に居ません(笑)。
とは言え、テクノロジーの侵食と正面から向き合い、時代との折り合いをつけるべく試行錯誤を続けた80年代中期のキャミオ、と言うかラリー・ブラックモンの才覚たるや凄いものがあったわけで、他のファンク・バンドが時代の荒波に飲まれて次々に沈没していくのを尻目に、ラリーは船の積荷(不用になったメンバー)を海に放り投げながらサヴァイヴし続けました。なんかこんな風に書くとラリーって酷いヤツみたいですが(笑)、いやホントはどんな人か知らないんですが、やはり新しい音をうまく消化/昇華し自分のモノにすることができたという点が、他の凡百のファンク・バンドとの違いということでしょうか。で、「Word Up!」ではついに時代のフロントに立ったわけです。
『She's Strange』は、ラリーの音楽的な試行錯誤と実験精神、そしてリストラに怯える他の3人のメンバーの表情を捉えたドキュメント(笑)です。何と言っても白眉はタイトル曲「She's Strange」。クールでスタイリュッシュ、それでいてゴツくて淫靡な幽玄ファンク。ビシバシきまる打ち込みのビート、ヘタウマなラップ、いつものチョコレート色のコーラスがキャミオ・マナーにしっかりと染め上げてくれます。
ミディアム〜スローの「Love You Anyway」もカッコいい曲です。途中、ジョージ・ベンソンばりにギターとユニゾンスキャットするあたりなんか、失禁寸前の気持ち良さに身を委ねつつ、思わず一緒に口ずさんでしまいます。
「Groove With You」はヒップなミッド・ファンク。ハンド・クラップがバシッとキマり、都会的な雰囲気のあるアーバン・グルーヴがなかなか気持ちよいです。「Hangin' Downtown」は陰影のあるスロー・バラッド。寒々とした空気と切ない情感が胸を締めつけます。グループ・ホーム「Supa Star」ネタです。
けたたましいシンセが耳障りなファンク・ロック「Talkin' Out The Side Of Your Neck」や、意味不明のレゲエ風「Tribute To Bob Marley」なんて曲があるせいで、アルバムとしての完成度はイマイチと言わざる得ませんが、避けては通れないような名曲もまたゴロゴロしている、何とも罪つくりなアルバムですね。