LOWRELL

ロウレル

ロウレル

マッシヴ・アタック「Lately」、コモン「Reminding Me」をはじめ、サンプリングの定番ネタとして、またメロウ・グルーヴの大クラシックとして知られる「Mellow Mellow Right On」。この曲を収録した元ロスト・ジェネレーションロウレル・サイモンの79年のソロ作なんですが、数年前にオリジナルを入手して以来、何か不気味な雰囲気のアルバムだなぁって思ってたんです。お世辞にも傑作といえるようなモノではないし、確かにシカゴ・ソウル的な滋養を音の端々に感じることはできるのですが、手抜き気味のジャケットも含めて、何か得体の知れないアングラ感が充満しています(ロスト・ジェネレーションの作品は未聴なのですが、このアルバムと共通する雰囲気があるのでしょうか?)。先ごろCD化されたのも、アルバムに対する評価というより、「Mellow Mellow Right On」人気に押されたカタチでしょうし。
しかし、妙に魅かれるものがあるんですよね、コレ。強力なベースラインに腰が揺れる「Mellow Mellow Right On」はやはり別格の出来ですが、その他も佳曲揃いです。流麗なストリングスを纏い、クラヴィネットをザックリと刻み付けるミッド・グルーヴ「You're Playing Dirty」。太いパーカッションがバウンスする中、爽やかさと妖しさが入り混じったストリングスとアコギの音がカタルシスをもたらす「Overdose」。洗練と野趣が同居する解放感溢れるメロウ・スロウ「Smooth And Wild」。これらの薄暗くジメジメした地下室で生み出されたようなサウンドは、個人的には、(ちょっと飛躍しすぎですが)どこか80年代初期のプリンス(『Dirty Mind』とか『Contorovesy』)と、音楽のタイプは違えど相通ずる雰囲気を感じます。