GARY BARTZ/THE SHADOW DO


ゲイリー・バーツと言えば、スピリチュアル・ジャズのサックス奏者としての評価が高いのだと思いますが、残念ながら70年代前半までの硬派な作風には僕は馴染めませんでした。で、僕にとってのバーツはミゼル兄弟と組んだ『The Shadow Do』と『Music Is My Sanctuary』の2枚ということになります。
75年作『The Shadow Do』の最大のトピックはやはり、ア・トライブ・コールド・クエスト「Butter」ネタとして有名な「Gentle Smiles(Saxy)」でしょう。酩酊感漂うムードに、螺旋階段を上っていくようなサビの歌メロとサックスのフレーズが印象的なジャジー・メロウ・グルーヴの傑作です。
アルバムの他の曲も、スカイ・ハイ・プロダクションらしい爽快な音で満たされています。シンセとクラヴィが柔和なグルーヴを紡ぐジャズ・ファンクWinding Road」。滑らかなバーツのサックスが本人の歌唱以上によく歌う「Mother Nature」。麗しいピアノに出だしから掴まれ、いつものミゼル印の男声コーラスが虚空を舞うメロウ・グルーヴ「Love Tones」。潮騒のようなシンセの音が敷き詰められ、海鳥を思わせるホイッスルが遠くに聞こえる中、サックスとリズム・セクションが爽快に飛ばすジャジー・ブリージン「Sea Gypsy」。サックスとトランペットの違いでしょうか、同年のドナルド・バード『Places And Spaces』ほど突き抜けた爽快感はありませんが、より腰の深いグルーヴを堪能できるジャズファンク・アルバムです。