AMP FIDDLER/WALTZ OF A GHETTO FLY

Waltz of a Ghetto Fly

Waltz of a Ghetto Fly

高校生の頃、僕はPファンクにハマり、パーラメントのCDを買い漁ってました。その頃、Pファンク人脈の新世代として登場したのがMr.フィドラーという兄弟ユニットでした。彼らのアルバム『With Respect』は、個人的にはジョージ御大の『Cinderella Theory』以上にお気に入りでした。
そのMr.フィドラーの片割れ、アンプ・フィドラーが04年にリリースした『Waltz Of A Ghetto Fly』。アンプは近年、(大雑把な言い方ですが)クラブ・ミュージックの分野での活躍で知られていたようですが、マクスウェル『Urban Hung Suite』やオルー『Soul Catcher』への参加などもあり、そうした活動からジャンルの垣根を越えた幅広い音楽性を構築していったようです。このソロ作は、ソウル、ファンク、テクノ、ハウスといった、これまでのキャリアで培った様々な要素を溶かし込みながら、音楽的な洗練を獲得することに成功しています。
アルバムを一聴して分かるのは、意外にもスライ・ストーンの多大な影響です。『With Respect』にもスライ調のクール・ファンク「Cool About It」みたいな曲がありましたが、このアルバムではスライからの影響を、更にアンプ流に咀嚼〜構築したファンクネスを聴くことができます。スライ「If You Want Me To Stay」のアップ・デイト仕様みたいな、グニャグニャと蠢くグルーヴのスロー・ファンク「I Believe In You」、ジェイ・ディーmeetsスライな感じの「Dreamim'」、オルガンがリズミックに動くクール・グルーヴ「Soul Divine」、「You Caught Me Smilin'」をサンプリングした、沈み込むグルーヴが気持ちイイ「You Play Me」、深海を漂うような酩酊グルーヴの「Eye To Eye」、いかにもスライがやりそうな、ヤケっぱちの哀愁メロの「If You Can't Get Me Off You Mind」 など、『Fresh』に近い雰囲気のクール・ファンクがアルバムの印象を支配しています。アンプの鼻にかかったくすんだヴォーカルも、かなりスライっぽいです。
他にも、美しい鍵盤の旋律が流れるメロウ・ソウル「Possibilities」、艶っぽい女声ヴォーカルが効果的なジャジーなメロウ・グルーヴ「Unconditional Eyes」、マシーン・ビートの無機質な刻みに色気が宿る「This Is How」といった、メロウ系の曲もなかなか充実しています。
妖しいグルーヴと黒光りするファンクネスの体現という意味において、2000年以降にリリースされた作品としては唯一、ディアンジェロ『Voodoo』に対抗し得るアルバムではないか、と個人的には思っています。