GIL SCOTT-HERON & BRIAN JACKSON


リズム隊と鍵盤類、パーカッションが有機的に絡み合い、ファンクやジャズ、ラテンをハイブリッドした生々しく躍動するグルーヴを生み出していた70年代中期のギル(とブライアン)とミッドナイト・バンド。76年の2枚組変則ライヴ盤『It's Your World』(http://d.hatena.ne.jp/stonegroove/20050829)を彼らのキャリアのピークとするのは衆目の一致するところでしょうか。翌77年の『Bridges』と78年の『Secrets』ではマルコム・セシルの助力を仰ぎ(ロバート・マーゴレフは不参加のようです)、鍵盤類をアンサンブルの中心に据えたサウンドになっており、それまでのエッジの効いたグルーヴが徐々にユルくなってきた感じです。
『Secrets』ではかつてのミッドナイト・バンドはほぼ解体、ハービー・メイソンやグレッグ・フィリンゲンスなどの腕利きミュージシャンを起用しています。かつてのラテン的な要素は影を潜め、夜の都市を連想させる洗練されたジャズ・ファンクサウンドがアルバムのカラーを決定付けています。『暴動』〜『Fresh』の頃のスライを彷彿とさせるダーク&クールなグルーヴを、都会的に洗練させたアーバン・ジャズ・ファンク「Angola,Louisiana」が何といっても白眉です。アシッド・ジャズへの影響も多大と思われ、特にヤング・ディサイプルズの「Apparently Nothin'」はかなり通底する雰囲気があります。
他にも、ユルユルにルーズなスロー・グルーヴ「Angel Dust」、クールに疾走するジャズ・ファンク「Madison Avenue」、パーカッションがチャカポコしながら沈鬱な表情を刻む「Cane」、クールなスロー・ファンク「Three Miles Down」、エレクトリックな肌合いのサウンドにギルのクールなボーカルが乗る「Third World Revolution」「Show Bizness」など、高層ビルの谷間を闇夜に徘徊するかのような、ヒンヤリとしたスリルを感じさせるグルーヴがカッコいい、後期ギル・スコット・ヘロンの傑作です。