BOBBI HUMPHREY/FANCY DANCER


ボビー・ハンフリーのブルーノート最終作『Fancy Dancer』が3月にCD化されるようです。僕はボビーの作品では、研ぎ澄まされたリズムと流麗なグルーヴが疾走する闇夜のジャズ・ファンク・アルバム『Blacks And Blues』が大好きで、個人的にはスカイハイ・プロダクションの最高傑作だと思っているのですが、この『Fancy Dancer』はあのドナルド・バード『Places And Spaces』と同じ75年作とあって、メロウ・サイドへの振り幅が大きいアルバムです。このアルバムでは、73年頃のリズムのキレはありませんが、このちょっとユルい感じのグルーヴもなかなか美味です。チープなイラスト・ジャケも結構好きだったりします。
1曲目の「Uno Esta」は、ちょっぴりリゾート気分の軽快なジャジー・グルーヴ。ダンサブルでとても楽しい曲です。「The Trip」では重層的なシンセをバックにボビーのフルートが大きく弧を描きながら上昇していくような、スカイハイらしい爽快感が気持ちいい曲です。「Sweeter Than Sugar」は、いつものもっさりしたミゼル印の男性コーラスに、フルートが甘めのフレーズをさえずる美しいメロウ・ナンバー。「Please Set Me At Ease」は幻想的な音像を映し出すシンセの上に、蕩けるようなフルートや歯切れのよいピアノ、ワウ・ギターやパーカッションの刻みが色鮮やかに映える極上メロウ・グルーヴ。
ヒップホップのサンプリング・ソースとしての引き合いも多いアルバムですが、アルバム1枚通して楽しめる好作だと思います。