BOBBY WOMACK/UNDERSTANDING

Understanding

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サム・クックの薫陶を受け、”The Last Soulman”の異名を持つボビー師匠は数々の逸話の持ち主です。ウーマック家とサムの家族との余りに濃い関係(ボビーはサムの死後、その未亡人と結婚。サムの娘とボビーの弟セシルも結婚。)も気になりますが、個人的に最も興味深いエピソードは、スライ『暴動』への参加です。ボビーがどの程度関与していたのかは分かりませんが(10年以上前のBMR誌のインタヴューで、ボビー本人が『暴動』レコーディング時のエピソードを語っていました)、マイルスも顔を出したというこのセッションは、おクスリでラリラリになりながら行われたとボビーは回顧していました。やっぱりそうだったんですね、『暴動』って。
その『暴動』への参加、またマーヴィンやカーティスの活動に大いに刺激を受けたであろうボビーの、ニュー・ソウル期の傑作群が『Communication』、『Understanding』、サントラ『Across The 110th Street』ということになります。なかでもこの『Understanding』は彼のキャリアにおける最高傑作だと思います。
マッスル・ショールズの録音ながら、他のサザン・ソウルには無い粘っこいファンク・グルーヴに、ボビーの焦げるようなディープな歌。ダニー・ハサウェイにも勝るとも劣らない、カバー曲を優れた解釈で完全に自分の色に染め上げてしまう才覚。このアルバムでボビーの魅力を隅々まで堪能することができます。
スライ通過後のファンクとしては、「I Can Understand It」、「Simple Man」の長尺ファンク2曲。緩いノリのグルーヴでジンワリと体温を上げる前者、性急なビートで激しく煽る後者とも、漆黒のソウル&ファンク・グルーヴです。そして、タイトなベースラインがリズムを刻む、クールなファンクネスに痺れるミッド・グルーヴ「Woman's Gotta Have It」の震えがくるようなカッコよさ!
必殺の泣きのメロとサム直伝の唱法で迫る「Ruby Dean」、思わずサビをボビーと一緒に歌い上げ、目頭が熱くなってしまう「Thing Called Love」、朴訥でまろやかなソウル・バラッド「Harry Hippie」などのオーセンティックな曲も、ふくよかなサザン・ソウルの名曲としての輝きを放っています。