ANTHONY HAMILTON/AIN'T NOBODY WORRYIN'

Ain't Nobody Worryin

Ain't Nobody Worryin

ついに出ました。2005年の大本命盤、アンソニー・ハミルトンの2ndアルバム。
2年前のデビュー盤『Comin' From Where I'm From』はサザン・ソウル的な味わいの真摯で愚直な好作でしたが、個人的には今年リリースされた未発表過去音源『Soulife』にやられました(当ブログでも紹介済みです http://d.hatena.ne.jp/stonegroove/20050906)。こちらのメイン・プロデューサーはマーク・スパークスということで、デビュー盤よりも現代的なアプローチのサウンドにアンソニーのディープなボーカルがマッチした傑作でした。
この分だと次は凄いのを出してきそう…、という期待はありました。渋かっこいいジャケットからも名盤の匂いが漂うこの『Ain't Nobody Worryin』、期待どおりの大傑作です!
ちょうど『Comin' From Where I'm From』と『Soulife』の中間を行くサウンドで、僕が現代のソウル・ミュージックに求める理想的なプロダクション。それから今作では楽曲の良さが際立っています。もちろんアンソニーの魂こもったディープな歌は健在で、ソウル・ミュージックの普遍的な魅力を体現しています。
複数のプロデューサーが関わっていますが、最も目を引くのがデビュー盤でも中核を担ったマーク・バトソン。彼が制作した冒頭の3曲がアルバム全体の雰囲気を決定付けています。
1曲目の「Where Did It Go Wrong?」は重いビートが不穏な空気を醸すビターなオーガニック・ソウル。「Southern Stuff」は温もりあるテンダーなムードのメロウ・ミディアム。まさにサザン・コンフォートな逸品です。バトソンらしいシンプルでタイトなビートに渋みが滲む「Can't Let Go」もなかなかです。
タイトル曲の「Ain't Nobody Worryin'」はラファエル・サディークのプロデュースで、パーカッションが効いたミッド・グルーヴ。ラファエル、いい仕事してます。
クリストファー・ポッティンガーという人のプロデュースで、アンソニーがコ・プロデュースの「Preacher's Daughter」は演奏も歌も真っ黒で激ソウルフルな一発。
アンソニーの枯れた歌ごころが沁みる、ケルヴィン・ウッテン制作の寂寥感漂う「Pass Me Over」もいい曲です。「Never Love Again」「I Know What Love's All About」もウッテン・プロデュースで、前者はアンソニーのファルセットが囁きかけるアーバン・コンテンポラリー、後者はオルガンが感情の高まりを表現するゴスペル・タッチのディープ・ソウル。アンソニーとウッテンの相性の良さを感じさせます。
ジェイムス・ポイザーのプロデュース(コ・プロデュースにクエストラヴ)の「Change Your World」は、とびっきりスウィートなバラード。ラリー・ゴールドの弦アレンジも光る、うっとりするような名曲です。ポイザーは久々にいい仕事したなぁ。
なぜかレゲエ調の「Everybody」(これもポイザーの制作)なんかもあったりするのですが、それを含めても見事な統一感と完成度を誇る、現代のロウなソウル・ミュージック。アンソニーディアンジェロとはまた別の意味で、ソウルの新たな指標となる存在なのではないでしょうか。