D’ANGELO/VOODOO

VOODOO
このアルバムについては、以前にちょっとだけコメントしたことがありました。その時「ここ15年間で最も偉大なR&Bアルバム」と書きました。この意を改めることはD'ANGELOが次のアルバムをリリースするまではあり得ない、と断言しておきます。だからナンだと言われそうですが、それほど僕はD'ANGELOに入れ込んでいるということなんです。
さらに以前のコメントを引用すると、「30年後の暴動、10年後のSIGN O THE TIMES」と、『VOODOO』を評しています。年数が若干合わない部分はありますが(汗)、そんな細かいことはどうでも良くて、これは『VOODOO』に対する僕なりの最大級の賛辞なのです。
確かにこのアルバムは、SLYとPRINCEからの影響を色濃く滲ませています。くぐもったダウナーなビート、地面スレスレを這うようなグルーヴ感は、まさに『暴動』直系と言えます。「FEEL LIKE MAKIN' LOVE」のカバーなんかは、まるで『暴動』のアウト・テイクです。一方PRINCEの影響は、ボーカル表現に顕著に表れています。「UNTITLED」でのスクリームやコーラスの重ね方は、PRINCEが“降りてきた”かのようです。この曲や「CHICKEN GREESE」などは、その曲調も含めていかにもPRINCEがやりそうな感じで、「『CRYSTAL BALL』に収録されるはずだった」と言われたら信じてしまいそうです。
他にも「PLAYA,PLAYA」のホーン・リフがPARLIAMENTっぽかったり、CURTISの影が見える部分もあったりして、先人たちの大いなる遺産を生真面目に受け継いだ感じはあります。しかしそれらの要素を、単に溶鉱炉に溶かし込み違うカタチの鋳型に流し込んだ程度のマイナー・チェンジに終わることなく、流し込んだ鋳型は前と同じカタチでも、鉄を金に変えてしまうような錬金術的なヤリくちで、まったくオリジナルな自己表現として完結してしまっています。
全曲コメント
1.「PLAYA,PLAYA」
 ジワジワと忍びよってくるベースにゾクゾクするスロー・ファンク。得体の知れないグルーヴが近づいてきたところで、スネアが爆裂しPなホーンが分け入ってくる。迫り来るグルーヴの嵐を予感させる、いきなりのベスト・トラック。
2.「DEVIL'S PIE」
 ギクシャクと進むビートに細切れのボーカル、最後はお馴染みのスクラッチが絡む、DJプレミア・プロデュースの激重HIPHOP・FUNK。
3.「LEFT & RIGHT」
 ユルいリズムに乗っかる80年代FUNK風のギター・カッティングがカッコいい。METHOD MANとREDMANもゆる〜く客演。
4.「THE LINE」
 強靭なベース・ラインに腰がモゾモゾ、永遠に続きそうなトグロ巻くグルーヴにクラクラ、それでいてどこかストイックな風情で淡々と反復・覚醒していくあたりはCURTISっぽいか。かなりクセになるFUNK。
5.「SEND IT ON」
 KOOL&THE GANG「SEA OF TRANQUILITY」のホーンを使っているが、JAZZYと言うよりはむしろオーセンティックなSOUL曲。このアルバムでは珍しく、1stアルバムにも通じるようなメロディアスさを持っている。
6.「CHICKEN GREESE」
 滑稽なギター・カッティングにリズミックなビート、細切れのボーカル、どこをとっても真っ黒なファンク!タイトルどおり、脂まみれで黒光りしてます。
7.「ONE MO GIN」
 アルバム中、最も地味な印象だが、実はかなり好きな曲。ポツリポツリと進んでいくようなスロー・グルーヴ。濃厚な味わいのSOUL。
8.「THE ROOT」
 サンプリング・ループのようなギター・リフがぐるぐると脳みその中を這いずり回る。これも少しCURTISを思わせるところがある。
9.「SPAINISH JOINT」
 タイトルどおり、ラテン風にギターとパーカッションが絡む、乾いたビートが路地裏を走り抜けるような哀愁味漂うFUNK。こっちがベスト・トラックか?
10.「FEEL LIKE MAKIN' LOVE」
 あの可憐な曲を引き裂くかのような、のた打つベース・ライン、ザクザクと刻むドラムスが真っ黒クールなFUNKカバー。HI・サウンドっぽい雰囲気もある。
11.「Greatdayindamornin' / Booty」
 P-FUNKなタイトルどおりのブーティー・ファンク・トラック。元妻アンジー・ストーンとの共作。
12.「UNTITLED」
 これは完全にPRINCEへのオマージュ。PRINCEへの憧憬がストレートに表現され、ホントにPRINCEになりきってます。けだし、名曲!
13.「AFRICA」
 アルバムのラストは自分のルーツを見つめるような曲。アルバム全編を通して、実はアフリカ的な時間軸で貫かれていたということに気づかされる。この曲自体はメロディもアレンジも美しく、アルバムをそっと締めくくる良曲。