JIMMY CASTOR BUNCH/I'TS JUST BEGUN


このアルバム、タイトル曲がサンプリングの定番ネタとして有名ですが、アルバム一枚通してヘヴィーなファンク・ビートに貫かれた、好きモノには堪えられない作品です。
サックス奏者、ジミー・キャスター率いるこのバンド、トランペットとピアノ担当のGerry Thomasは後のファットバック・バンドの中心人物です。その為か、このアルバムでも、ファットバックに通じるような荒々しくナスティなファンクを聴かせてくれます。
とぐろ巻く轟音ベースが重戦車の如く突進する激重レア・グルーヴ「It's Just Begun」、まさに豪放磊落、抑えきれない衝動にかられる猛ファンクです。石斧で頭をカチ割られるようなヘヴィーなビートにKO必至の原始ファンク「Troglodyte(Cave Man)」、キャッチーなリフを繰り出すファンク「You Better Be Good(Or The Devil Gon' Getcha)」、重心低いグルーヴの上にコンガやティンバレスが陽気に弾けるラテン・ファンク「Psyche」、こちらもラテン的なアクセントの効いたファンク・ナンバー「L.T.D.(Life,Truth&Death)」など、ファンク曲はどれも直情型の性急なビートに煽られて血圧上がります。
その一方で、何故かやたらに爽やかなポップ・ソウル「My Brightest Day」、キュートな曲調がジャクソン・5みたいな「I Promise To Remember」と、非ファンク曲も意外な充実っぷりです。
それにしても、この気味悪いジャケットだけは、どうにかならないもんですかねぇ。

GIL SCOTT-HERON & BRIAN JACKSON


リズム隊と鍵盤類、パーカッションが有機的に絡み合い、ファンクやジャズ、ラテンをハイブリッドした生々しく躍動するグルーヴを生み出していた70年代中期のギル(とブライアン)とミッドナイト・バンド。76年の2枚組変則ライヴ盤『It's Your World』(http://d.hatena.ne.jp/stonegroove/20050829)を彼らのキャリアのピークとするのは衆目の一致するところでしょうか。翌77年の『Bridges』と78年の『Secrets』ではマルコム・セシルの助力を仰ぎ(ロバート・マーゴレフは不参加のようです)、鍵盤類をアンサンブルの中心に据えたサウンドになっており、それまでのエッジの効いたグルーヴが徐々にユルくなってきた感じです。
『Secrets』ではかつてのミッドナイト・バンドはほぼ解体、ハービー・メイソンやグレッグ・フィリンゲンスなどの腕利きミュージシャンを起用しています。かつてのラテン的な要素は影を潜め、夜の都市を連想させる洗練されたジャズ・ファンクサウンドがアルバムのカラーを決定付けています。『暴動』〜『Fresh』の頃のスライを彷彿とさせるダーク&クールなグルーヴを、都会的に洗練させたアーバン・ジャズ・ファンク「Angola,Louisiana」が何といっても白眉です。アシッド・ジャズへの影響も多大と思われ、特にヤング・ディサイプルズの「Apparently Nothin'」はかなり通底する雰囲気があります。
他にも、ユルユルにルーズなスロー・グルーヴ「Angel Dust」、クールに疾走するジャズ・ファンク「Madison Avenue」、パーカッションがチャカポコしながら沈鬱な表情を刻む「Cane」、クールなスロー・ファンク「Three Miles Down」、エレクトリックな肌合いのサウンドにギルのクールなボーカルが乗る「Third World Revolution」「Show Bizness」など、高層ビルの谷間を闇夜に徘徊するかのような、ヒンヤリとしたスリルを感じさせるグルーヴがカッコいい、後期ギル・スコット・ヘロンの傑作です。

JAMES BROWN'S FUNKY PEOPLE(PART3)

Vol. 3-Funky People

Vol. 3-Funky People

JBファミリーのレア・トラックス第3弾。このシリーズのパート1と2は手持ちとのダブりが多いので買ってませんが、このパート3は未発表曲を多数含み更にレア度UP。あまりの濃厚、凄絶さに失神KO寸前のスーパー・ヘヴィー・ファンク集です。
「Talkin' Loud And Saying Nothin'」(Original Rock Version)は、バウンスするリズムが印象的なオフィシャル版と比較すると、ベタつき気味のリズムにチキン・ギターが絡む、これはこれでなかなかファンキーな曲。全然ロックじゃありませんのでご心配なく。「Blow Your Head」(Undubbed Version)は、オリジナルからシンセを抜いてストイックにビートを強化したヘヴィー・ファンク。こっちの方がイイかも。
JB'sがThe Believers名義で吹き込んだ「Mr. Hot Pants a.k.a Across The Track」(Pts1&2)は、ジョニー・グリッグスのコンガがエッジの効いたグルーヴを叩き出すグレイトなファンク。とんでもないカッコ良さです。Hank Ballad「How You Gonna Get Respect (When You Haven't Cut Your Process Yet) 」は、JBの淫靡で愉快なファンキー・ソウル傑作「Lickin' Stick」の改題カバー。やはりJBには敵いませんが。
Bobby Byrd「Doin' The Do」はオリジナルJB'sがバックを務めてます。凄まじいビートの太さに圧倒されるウルトラ・ヘヴィー・ファンク!やっぱりオリジナルJB'sこそ史上最強のファンク・バンドです。アヴェレイジ・ホワイト・バンドをおちょくったようなタイトルの、A.A.B.B.(Above Average Black Band)の「Pick Up The Pieces One By One」 は、フツーの白人さん達に対してついムキになってしまったJBが、流石に平均以上の仕事をしてくれてます。「Pick Up The Pieces」というよりも、その元ネタのJB's「Hot Pants Road」をタイトに再演しストリングスを被せたというシロモノ。Harmlessのコンピ『Pulp Fusion vol.6 Magnum』にも収録されてました。
「Yes It's You」が有名なSweet Charles「Hang Out & Hustle」はクールなミッド・ファンキー・ソウル。Dee Felice Trioによる「There Was A Time」のカバーは、骨太なリズム隊と力強いピアノがイカすファンキー・ラテン・ジャズ。Vicki Anderson「If You Don't Give Me What I Want (I Gotta Get It Some Other Place) 」は、ヘヴィーなグルーヴがのたうつ傑作ファンク。ベスト盤『Mother Popcorn:The Vicki Anderson Anthology」にも収録されてます。熱いファンク・グルーヴに痺れるMarva Whitney「It's My Thing(You Can't Tell Me Who To Sock It To)」のライヴ・ヴァージョンも堪らないデキです。
パート4、出ないかなぁ。

ONENESS OF JUJU/AFRICAN RHYTHMS

アフリカン・リズムス

アフリカン・リズムス

ニューヨークのアフリカ回帰主義のバンド、ワンネス・オブ・ジュジュの75年作『African Rhythms』。これをアフロ・ファンクと言っていいのか分からないけど、スピリチュアル・アフリカへの憧憬と都会的な洗練がうまい具合にかみ合ったレア・グルーヴの傑作アルバムです。
アルバムは1曲目から最高の盛り上がりを見せます。ワサワサしたリズム、大地を踏み鳴らすパーカッション、咆哮するホーン、プリミティブな血がたぎるアフリカン・コーラス、魂を揺さぶる真っ直ぐなボーカル。グラウンド・ビートの祖形となるレア・グルーヴ・クラシック「African Rhythms」。ベースラインが強力なアフリカン・ジャズ・ファンク「Kazi」。ゆったりとしたリズムの上にホーンがユルく乗っかるアフロ・ジャジー・グルーヴ「Tarishi」。ヌルい風が吹き抜けるフュージョン・テイストの「Mashariki」。これらアナログA面にあたる曲の流れはホントに素晴らしいです。
B面の方も、クールに疾走するジャズ・ファンク「Don't Give Up」、シンコペイトするファンク・リズムと掻きむしるワウ・ギターが最高な「Poo Too」〜「Liberation Dues」など、グルーヴをキープし続ける隙のないつくりになっていて、まさにKeep On Movin'なアルバムです。
続く76年作『Space Jungle Luv』は、より都会的な洗練を極めたジャジー&メロウ・グルーヴの傑作。こちらも『African Rhythms』とセットで持っておきたいアルバムです。

LOU COURTNEY/I'M IN NEED OF LOVE

I'm in Need of Love

I'm in Need of Love

マーヴィンの『What's Going On』を起点とする70'sのメロウ&グルーヴィーなソウル・ミュージック、特にレオン・ウェアジョニー・ブリストルが大好きな僕やアナタにとって、このルー・コートニー『I'm In Need Of Love』は必ずやツボと涙腺を突いてくる作品です。フリー・ソウル・シーンでも人気のアルバムですが、オリジナルは結構レアだったりします。
ストリングスを効果的に用いたリッチなシンフォニック・ソウル、フルートなどで味付けされたサウンドはメロウではあるけれど若干硬めのグルーヴを紡いでいて、MGM時代のブリストルを彷彿とさせます(曲のタイトルが妙に長めなところはバリー・ホワイト風)。
ブリストルの「Woman,Woman」みたいな曲調、ファンクを下地にしたカッチリしたリズムを従えて、向かい風の中を泣きながら疾走する哀愁グルーヴィー・ソウル「I Don't Need Nobody Else」。ワウ・ギターとパーカッションがアクセントをつけるリズミックなファンキー・ソウル「I'm In Need Of Love」。この2曲がこのアルバムの白眉と言ってよいと思います。他には、硬質なリズムに柔らかな上モノが乗る「What Do You Want Me To Do」、晴れやかグルーヴが駆け抜けるアップ「I Will If You Will」、クールな風情のミディアム「Somebody New Is Lovin' On You」あたりが良いです。
また、シンガーとしてのルーは繊細なバラディアーといった趣で、空気に溶け込むような伸びやかなテナーが開放感と切なさを醸しています。テンダーなムードで歌い上げる「Since I First Laid Eyes On You」、途中でカリブ風のリズムに展開する「The Best Thing A Man Can Ever Do For His Woman」、ロマンティックに愛を語る「I'm Serious About Lovin' You」、静寂の中に広がる物悲しさに胸が張り裂けそうになる「Just To Let Him Break Your Heart」といったバラッドの佳曲も収録されています。
ブリストルの『Hang On In There Baby』が好きな人に是非オススメしたいアルバムです。

LYNDEN DAVID HALL/MEDICINE 4 MY PAIN


メディシン・4・マイ・ペイン

メディシン・4・マイ・ペイン

90年代後半、「UKからディアンジェロへの回答」と称された才能あるアーティスト、リンデン・デヴィッド・ホールがガンのため亡くなりました。
ショックです…。先日のジェイ・ディー急逝もショックでしたが、今回のリンデンの訃報は、97年のデビュー以来彼の作品を聴き続けてきたファンの一人としては残念で堪りません。ここ数年は悪性リンパ腫を患い闘病を続けていましたが、昨年3rdアルバム『In Between Jobs』で見事復活を果たした矢先でした。享年31歳、僕よりも若いのに、早すぎます。
彼の遺した3枚のアルバムは、そのどれもが優れた作品ですが、一番思い入れ深いのは1st『Medicine 4 My Pain』です。とかくディアンジェロとの近似性ばかりが強調されてきた作品ですが、同世代の才能あるアーティストが、時代のクールを突き詰め共振した結果、と個人的には捉えています。タイトなベース&ドラムス、くすぐるようなワウ・ギター、スペースをたっぷりと活かした抑制したファンクネスを生むグルーヴ。「Do I Qualify?」、「Sexy Cinderella」、「There Goes My Sanity」あたりは、ディアンジェロが『Brown Sugar』でやらんとしていたことを、親しみやすいメロディに変換して、より分かりやすく提示してみせています。
メランコリックなほんわかミディアム「Crescent Moon」や「The Jimmy Lee Story」はディアンジェロには絶対にない資質を感じるし、骨太ファンキーなベースラインがうねるグルーヴを生む「Livin' The Lie」は、UKの大先輩、オマーを見習ったかのよう。冒頭の808の響きが「Sexual Healing」みたいな「100 Heart Attacks」も、タイトルからしてリンデンならではの洒落っ気というか茶目っ気を感じます。カッチリしたビートの上に澄み切った空気と青臭い情感を乗せる岡村靖幸っぽい(?)ミディアム・ソウル「Yellow In Blue」、幽玄ビートのスロウ・グルーヴ「I Wish I Knew」など、全く捨て曲なし、どころか傑作ばかりのアルバムです。
より幅広い音楽性とふくよかなソウル・マインドを見せた2000年の2nd『The Other Side』、ようやく彼を苦しめたディアンジェロの呪縛を振り払った昨年の復活作『In Between Jobs』も良い作品です。今日は彼の作品を聴いて故人の冥福を祈ることにします。
R.I.P.

BOBBY WOMACK/UNDERSTANDING

Understanding

Understanding

サム・クックの薫陶を受け、”The Last Soulman”の異名を持つボビー師匠は数々の逸話の持ち主です。ウーマック家とサムの家族との余りに濃い関係(ボビーはサムの死後、その未亡人と結婚。サムの娘とボビーの弟セシルも結婚。)も気になりますが、個人的に最も興味深いエピソードは、スライ『暴動』への参加です。ボビーがどの程度関与していたのかは分かりませんが(10年以上前のBMR誌のインタヴューで、ボビー本人が『暴動』レコーディング時のエピソードを語っていました)、マイルスも顔を出したというこのセッションは、おクスリでラリラリになりながら行われたとボビーは回顧していました。やっぱりそうだったんですね、『暴動』って。
その『暴動』への参加、またマーヴィンやカーティスの活動に大いに刺激を受けたであろうボビーの、ニュー・ソウル期の傑作群が『Communication』、『Understanding』、サントラ『Across The 110th Street』ということになります。なかでもこの『Understanding』は彼のキャリアにおける最高傑作だと思います。
マッスル・ショールズの録音ながら、他のサザン・ソウルには無い粘っこいファンク・グルーヴに、ボビーの焦げるようなディープな歌。ダニー・ハサウェイにも勝るとも劣らない、カバー曲を優れた解釈で完全に自分の色に染め上げてしまう才覚。このアルバムでボビーの魅力を隅々まで堪能することができます。
スライ通過後のファンクとしては、「I Can Understand It」、「Simple Man」の長尺ファンク2曲。緩いノリのグルーヴでジンワリと体温を上げる前者、性急なビートで激しく煽る後者とも、漆黒のソウル&ファンク・グルーヴです。そして、タイトなベースラインがリズムを刻む、クールなファンクネスに痺れるミッド・グルーヴ「Woman's Gotta Have It」の震えがくるようなカッコよさ!
必殺の泣きのメロとサム直伝の唱法で迫る「Ruby Dean」、思わずサビをボビーと一緒に歌い上げ、目頭が熱くなってしまう「Thing Called Love」、朴訥でまろやかなソウル・バラッド「Harry Hippie」などのオーセンティックな曲も、ふくよかなサザン・ソウルの名曲としての輝きを放っています。